会長あいさつ

医政活動について考える

                                                           

 厳しい残暑が続いています。告知放送による熱中症警戒アラートを聞
いて始まる毎日に、すっかり慣れてしまいました。また、 7 月後半から
始まった新型コロナウイルスの第11波は、県内でワースト の状況が
ばらく続きましたが、先生方のご尽力により、ようやく改善の兆しが見
えつつあります。今後ともご協力の程、よろしくお願いいたします。


 今年度、医師会では役員改選にあたり、役員の変更がございました。
永年、ご尽力を頂きました副会長の平山重孝先生、監事の中田和孝先生
が、ご退任となりました。両名の先生におかれましては、医師会へのご
貢献に対し深甚なる感謝を申し上げると共に、今後とも大所高所からご
指導くださいますよう、お願い申し上げます。
 また、理事の平山長一朗先生には新たに監事にご就任頂きました。そ
して、蒲地亮介先生に副会長、品川知洋先生と江田慶輔先生に理事、白
川琢大先生に裁定委員にご就任いただきました。各先生方におかれまし
ても今後ともご支援の程、よろしくお願いいたします。


 さて今年度は、 6 年ぶりの診療・介護報酬同時改定が行われました。
結果として本体改定率がプラス0.88% となりましたが、今年 2 月の中医
協会長の「近年にない社会経済状況への対応も求められると共に、ポス
ト2025を見据えた対応を求められたことから、内容が幅広いものとなっ
た。」との発言にもあるように、非常に煩雑で膨大な改定内容となりま
した。そのため、通常の改定時とは異なり、 4 月から 月までを届け出
期間とし、 6 月から新たな診療報酬での請求が可能とされました。特に
今回新設されたベースアップ評価料については、内容の理解、実際のベー
スアップ分の計算、届け出と大変労力を要するもので、多くの医療機関
で大変な負担となったようです。


 ご存知の先生方も多いと思いますが、当初、令和 年11月の財務省
政制度審議会では、診療所では極めて良好な直近の経営状況があり、本
体改定率は診療所の初再診を中心に5.5% 程度引き下げ、全体でマイナ
ス 1% とする意見が出されました。これに対し日本医師連盟では、各都
道県医師連盟を通じて自民党国会議員へ「財務当局は、都合の良い資料
を用い診療報酬プラス改定不要の主張をしているが、全国の医療機関の
経営実態を正確に把握しておらず、国民の命と健康を守る診療報酬改定
を実現しなければならない。」との働きかけを強力に行いました。
 その結果、土壇場の12月20日の予算大臣折衝で逆転、なんとかプラス
改定となったわけです。

 このように日本医師会では中医協以外にも、医師連盟の医政活動を通して、
政府与党への働きかけを随時行なっています。しかし、会員の先生方にはそ
の活動は、充分に認知されてはいないのが現実です。実際、国内にはさまざ
まな業界団体の政治連盟があり、それぞれの立場から政治活動を行なってい
ます。医療関係だけでも日本歯科医師連盟、日本薬剤師連盟、日本看護連盟
をはじめとして大変多くの政治連盟があります。
 日本医師連盟の活動目的は、「国民の命と健康を守る」という使命を果た
すため、日本医師会が考える医療の実現に向けて、努力することにあります。
当然、政治活動ですから国政レベルでの選挙活動は必須となります。日頃か
らの地元選出国会議員との関係構築、 3 年に一度の参議院選挙比例区での選
挙活動は大事となります。特に後者は、数ある職能業界団体の政治連盟の全
国共通テストの意味あいが強く、単に当落だけでなく、どれだけの得票数で
当選するかで、その後の発言力が決まります。ちなみに 2 年前、医師連盟の
推薦で自見はなこ議員が獲得した票は21万3369票で、厚生労働関係では最も
多い得票数でした。その後のご活躍は言わずもがなです。しかし医師連盟最
盛期には、100万の集票力と評価されていた頃もあり、いろいろな医療関係
の政治連盟ができた背景があるにせよ、組織力の強化は必要です。


 また日本医師会では、平成 年に「人にやさしい医療を目指して」を掲げ、
「国民のための医療政策展開」を支援するシンクタンクとしての、日本医師
会総合政策研究機構(日医総研)を設立しました。医療に関する様々なテー
マを「経済・情報系」と「医学・倫理系」及び「戦略・開発系」の 3 つの研
究体系に分け、研究を行なっています。日本医師会や医師連盟は、そこで得
られた研究成果を医療政策の立案、提言に役立てています。
 このように日本医師会では、中医協を通して診療報酬点数の改定等に関与
し、医師連盟を通して、それ以外の医政活動を行なっています。しかし昨今、
診療報酬改定のたびに、対応すべき項目が具体化され、財源も紐付きとなっ
て、中医協の裁量が縮小しています。そのため、日本医師連盟を中心とした
医政活動の重要性が増してきています。


 国民皆保険は世界に冠たる社会保証制度ですが、今後の更なる少子高齢化
を考えると、努力なしでは存続は危いかもしれません。様々な理由で政治活
動をためらわれる先生方もおられますが、「国民の命と健康を守る」という
原点に立ち返って、国民のために必要な政策を提言していく活動とご理解を
いただければ幸いです。
 今後ともご協力の程、よろしくお願いいたします。

                                   令和6年8月吉日
                                   壱岐医師会 会長
                                      品川 敦彦
 

 社団法人 壱岐医師会 会長 品川 敦彦